学部プロジェクト
農業高校における
農業実習支援システムの研究
高木 正則,山田 敬三,佐々木 淳
農業についての専門技術や知識を教育している農業高校では、毎年生徒が入れ替わるため、一人の生徒が3年間で学んできた体験やノウハウを次の学年へ継承することが難しく、経験則が蓄積・活用されにくい傾向があります。
一方、近年、文部科学省が推進している高大接続改革により、高校の教育現場では、基本的・基礎的な「知識・技能」に加え、「思考力・判断力・表現力」や「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」の育成も求められています。
そこで、本研究では、農業実習時の作物栽培における経験則の継承と思考力・判断力・表現力の育成を目的とし、農業実習を支援する情報システムを提案・開発します。
具体的には、農業実習時における経験則の蓄積・活用モデルを提案し、このモデルに基づいて経験則の蓄積と活用を支援する機能と、実習中に判断に迷った農作業場面をスマートフォンで撮影し、撮影画像を利用して作問学習を行える機能を開発します。開発したシステムは盛岡農業高校で実施されている農業実習時に活用してもらい、システムの有効性を評価します。
本研究の概要図を以下に示します。
本システムは、実習時に農作業や作物の成長をスマートフォンから記録できる観察・作業記録機能と、経験則の抽出作業を支援するデータ分析機能、経験則の登録と活用を支援する経験則登録・参照機能、作問学習の一連のプロセスを支援する作問学習支援機能群から構成されます。また、圃場の環境データ(温度、湿度、日射量など)の記録には株式会社セラクの温室内環境遠隔モニタリングシステム「みどりクラウド」を利用し、記録された環境データはAPIを用いて本システムのデータベースにも記録されるようにします。
農地の様子(盛岡農業高校)
スマートフォンによる作問素材収集の様子
生徒が作成した問題例
農業分野へのICTの活用に関連する研究や既存のサービスは多々存在しますが(表1)、本研究は農業実習や農業体験を行っている教育機関を支援対象としている点に新規性があります。また、各種センサを活用したIOTを農業教育に応用した点で学術的な特色があります。
表1 関連サービス・関連研究と本研究の位置づけ